大学祭の「AIお化け屋敷」が暴走した日
東都未来大学の大学祭。
二階堂先生は、とんでもない企画を思いついた。
「今年は、AIを使った世界最恐のお化け屋敷を作るぞ!」
学生たちは嫌な予感がした。
まず、お化け屋敷には大量の機械を使う。
パソコンに新しいカメラを接続すると、OSとカメラの間を仲介するデバイスドライバをインストールした。
さらに、空から来場者を撮影するためにドローンも飛ばすことにした。
「先生、大学の中で飛ばして大丈夫ですか?」
「たぶん。」
「その『たぶん』が怖いんですよ。」
撮影した動画は大量に保存されるため、
C:\festival\horror\video
というパスを決めた。
もしデータが消えても困らないように、毎晩バックアップも取る。
そして、お化け人形の内部には、その機器自体を制御するファームウェアが組み込まれていた。
動画や画像は一つ一つファイルとして保存されていく。
ところが二階堂先生は言った。
「クラウドなんか信用できん!全部大学の中に置く!」
そこでサーバを大学内に設置するオンプレミス方式を採用した。
パソコン同士は有線LANのイーサネットで接続した。
ところが開場10分前。
「先生!ネットがつながりません!」
「よし。私のスマホでテザリングだ!」
学生50人とAIお化け屋敷を一台のスマホにつないだ。
二階堂先生のスマホは熱くなった。
「先生、スマホから煙が出てます。」
「気のせいだ。」
さらに、お化け屋敷のWebサイトには、
horror-shumei.jp
というドメイン名を付けた。
このお化け屋敷の最大の売りはAIだった。
来場者の情報はデータベースに保存される。
名前を高速に検索できるようにインデックスも作成した。
撮影された大量の動画は、小さな見本画像であるサムネイルで一覧表示できる。
受付にはAIのチャットボットも設置された。
学生が聞く。
「トイレはどこですか?」
チャットボットは答えた。
「あなたの後ろです。」
学生が振り返る。
誰もいない。
「怖えよ!」
さらに二階堂先生は、AIで架空の幽霊動画を作った。
本物の映像のような偽物を作るディープフェイク技術である。
そして、大量のデータから幽霊の顔を学習させるため、ディープラーニングも利用した。
集まった来場者データをデータマイニングして、
「どんな人が一番怖がるのか」
を分析する。
年齢別に悲鳴を上げた回数を集計し、ヒストグラムも作った。
しかも動画、音声、アクセス履歴など、あまりにも大量で多様なデータが集まり、完全にビッグデータになっていた。
二階堂先生は大喜びした。
「これは研究になるぞ!」
学生は言った。
「先生、大学祭を楽しんでください。」
ところが夜。
事件が起きた。
謎の人物がシステムに不正侵入し、データを書き換えるクラッキングを始めたのである。
「先生!幽霊の画像が全部、先生の顔になっています!」
モニターを見ると、二階堂先生の顔が1000個並んでいた。
「これはこれで怖いな。」
ソフトウェアが勝手にコピーされないようコピープロテクトも設定した。
Webフォームから危険な文字列を入力されないよう、入力内容を変換・除去するサニタイジングも実施した。
しかし事件は終わらない。
学生のパソコンに、こっそり情報を収集するスパイウェアが入り込んでいた。
さらにメールボックスを見ると、
「あなたは100億円当選しました!」
「今すぐクリック!」
「二階堂先生から緊急のお知らせ!」
というスパムメールが5000通届いていた。
学生が聞いた。
「先生、100億円当たったらどうします?」
「大学辞める。」
「クリックしちゃダメです。」
念のため、パソコン起動時には信頼されたソフトウェアだけを実行するセキュアブートを有効にした。
それでも調べてみると、システムには攻撃に利用される可能性のあるセキュリティホールが見つかった。
しかも犯人は匿名性の高いインターネット領域であるダークウェブで、
「東都未来大学AIお化け屋敷攻略法」
を販売しているらしい。
さらにプログラムを調査すると、通常の認証を通らず侵入できるバックドアまで発見された。
「誰だ、こんなの作ったのは!」
開発担当の学生が手を挙げた。
「先生が『面倒だから管理者用の裏口を作れ』って……」
「……。」
そこで二階堂先生は、通信を監視して不正なアクセスを遮断するファイアウォールを強化した。
「これで完璧だ!」
その瞬間、一通のメールが届いた。
【重要】大学システム管理部
セキュリティ確認のため、IDとパスワードを入力してください。
二階堂先生は言った。
「おお、ちょうどいい。入力しよう。」
学生全員が叫んだ。
「先生、それフィッシングです!!!」
田中先生の手が止まった。
「危なかった……。」
翌日。
大学祭のお化け屋敷には長蛇の列ができていた。
学生が聞いた。
「先生、結局どのお化けが一番怖かったですか?」
二階堂先生は静かに答えた。
「フィッシングメール。」
学生たちは深くうなずいた。
本当に怖いのは幽霊ではない。
情報セキュリティなのである。
