英語では発音もスペルも異なるのに、カタカナで表すと同じ形になる単語があります。
たとえば、「トラック」には次の二つがあります。
- track:走路、軌道、追跡、CDなどに収録された曲
- truck:貨物自動車
これは、英語にある音の違いの一部が、日本語のカタカナ表記では区別されないためです。
このような語は、一般向けには次のように呼ぶことができます。
- カタカナ語の同音異義語
- カタカナ表記上の同形異義語
- カタカナ化によって同じ表記になる英単語
ただし、英語でも同じ発音をする単語と、英語では発音が異なるのにカタカナにすると同じになる単語は、分けて考える必要があります。
1./s/と/θ/が「ス」になる例
英語の /θ/ は、舌先を歯の間に近づけて出す音です。日本語には対応する音がないため、一般に「ス」や「サ行」の音で表されます。
| カタカナ | 英語1 | 英語2 |
|---|---|---|
| パス | pass:通過する、合格する | path:道、経路 |
| バス | bus:乗合自動車 | bath:入浴、風呂 |
| マス | mass:質量、集団 | math:数学 |
| マウス | mouse:ネズミ | mouth:口 |
| フェイス | face:顔 | faith:信頼、信仰 |
| フォース | force:力 | fourth:第4の |
| シンク | sink:沈む、流し台 | think:考える |
| シック | sick:病気の | thick:厚い |
| サム | sum:合計 | thumb:親指 |
| テンス | tense:時制、緊張した | tenth:第10の |
たとえば、「パス」と書かれていても、英語では pass と path の二つが考えられます。
2./l/と/r/が区別されにくい例
英語では L と R は別の音ですが、日本語ではどちらも主にラ行で表されます。
| カタカナ | 英語1 | 英語2 |
|---|---|---|
| ライト | light:光、軽い | right:右、正しい、権利 |
| グラス | glass:ガラス、コップ | grass:草、芝生 |
| ライス | rice:米 | lice:シラミの複数形 |
| ロック | rock:岩、ロック音楽 | lock:鍵を掛ける、錠 |
| ロード | road:道路 | load:荷物、読み込む |
| フライ | fry:揚げる | fly:飛ぶ、ハエ |
| プレイ | play:遊ぶ、演じる | pray:祈る |
| フレーム | frame:枠、骨組み | flame:炎 |
| クラウド | cloud:雲、クラウド | crowd:群衆 |
| クラッシュ | clash:衝突する | crash:激突する |
| フリー | free:自由な、無料の | flee:逃げる |
| ブルー | blue:青 | brew:醸造する |
| クライム | climb:登る | crime:犯罪 |
| ブランド | brand:商標、ブランド | bland:味気ない |
| コレクト | collect:集める | correct:正しい、訂正する |
| エレクト | elect:選ぶ | erect:直立した、建てる |
| アライブ | alive:生きている | arrive:到着する |
| グラマー | grammar:文法 | glamour:魅力、華やかさ |
「プレイ」は少し特殊
「プレイ」は通常、英語の play に由来する外来語です。
- play:遊ぶ、演奏する、競技する
- pray:祈る
- prey:獲物、捕食する
英語では、pray と prey は基本的に同じ発音です。一方、play はLとRの違いがあるため、英語では異なる発音です。
ただし、英語の発音をカタカナで大まかに表すと、いずれも「プレイ」になります。
日本語で一般的に「プレイヤー」と書いた場合は、通常は player、つまり選手、演奏者、利用者、再生装置などを意味します。
3.母音の違いがカタカナで同じになる例
英語には、日本語より多くの母音があります。そのため、英語では異なる母音でも、カタカナでは同じ「ア」などで表されることがあります。
| カタカナ | 英語1 | 英語2 |
|---|---|---|
| ファン | fan:扇風機、愛好者 | fun:楽しみ |
| ハット | hat:帽子 | hut:小屋 |
| バット | bat:バット、コウモリ | but:しかし |
| ラム | ram:雄羊、RAM | rum:ラム酒 |
| トラック | track:走路、軌道、追跡 | truck:貨物自動車 |
| パック | pack:包み、詰める | puck:ホッケーの円盤 |
| スタッフ | staff:職員 | stuff:物、詰め込む |
| ラスト | last:最後の | lust:強い欲望 |
| クラッシュ | crash:衝突する | crush:押し潰す |
| フラッシュ | flash:閃光、点滅する | flush:洗い流す |
| スラム | slam:強く閉める、たたきつける | slum:貧困地区 |
| スタンプ | stamp:切手、スタンプ | stump:切り株 |
| アンクル | ankle:足首 | uncle:おじ |
| カラー | color:色 | collar:襟 |
「トラック」の track と truck も、この母音の違いがカタカナで失われた例です。
英語では、trackとtruckの母音は異なりますが、日本語ではどちらも「トラック」と表されます。
4./s/と/ʃ/が「シ」になる例
英語の /s/ と /ʃ/ は別の音です。
しかし、特に母音の「イ」が続く場合、日本語ではどちらも「シ」で表されることがあります。
| カタカナ | 英語1 | 英語2 |
|---|---|---|
| シート | seat:座席 | sheet:紙、シーツ |
| シップ | sip:少しずつ飲む | ship:船 |
| シン | sin:罪 | shin:すね |
| シープ | seep:染み出る | sheep:羊 |
| シー | see:見る | she:彼女 |
日本語の「シート」だけを見ると、英語の seat と sheet のどちらを表しているのか、文脈によって判断する必要があります。
- チャイルドシート:seat
- ベッドシート:sheet
5./b/と/v/が同じ表記になりやすい例
現在では、Vの音を「ヴ」で表すこともあります。
しかし、一般的なカタカナ表記では、BとVの両方がバ行で表されることがあります。
| カタカナ | 英語1 | 英語2 |
|---|---|---|
| バン | ban:禁止する | van:小型貨物車 |
| ベリー | berry:小さな果実 | very:非常に |
| ベスト | best:最良の | vest:袖のない衣服 |
| ボート | boat:船、ボート | vote:投票する |
| ベール | bale:俵、梱包 | veil:覆い、ベール |
| ボルト | bolt:ボルト、かんぬき | volt:電圧の単位 |
現在は、vanを「ヴァン」、veryを「ヴェリー」、voteを「ヴォート」のように書くこともできます。
ただし、実際の日本語表記では「バン」「ベリー」「ボート」と書かれることも多いため、BとVの区別が見えなくなる場合があります。
6.長母音・二重母音・Rを含む母音が同じ表記になる例
英語では、母音の後ろにRがあるかどうかや、単母音と二重母音の違いによって発音が変わります。
しかし、カタカナでは同じ長音「ー」で表されることがあります。
| カタカナ | 英語1 | 英語2 |
|---|---|---|
| コード | code:符号、プログラム | cord:ひも、電気コード |
| コート | coat:上着 | court:法廷、競技場 |
| フォーム | form:形式、入力欄 | foam:泡 |
| ソース | source:情報源、出典 | sauce:調味料 |
| ロード | load:荷物、読み込む | lord:君主、領主 |
| ボール | ball:球 | bowl:鉢、ボウル |
たとえば、IT分野の「ソースコード」のソースは source ですが、料理に使うソースは sauce です。
- source code:ソースコード
- tomato sauce:トマトソース
英語では発音もスペルも異なりますが、日本語ではどちらも「ソース」になります。
7.語末の子音がカタカナでは区別されにくい例
日本語では、基本的に子音だけで音節を終えることができません。そのため、英語の語末の子音には母音が加えられます。
その結果、異なる英単語が似たカタカナ表記になることがあります。
| カタカナ | 英語1 | 英語2 |
|---|---|---|
| バッグ/バック | bag:かばん | back:後ろ、背中 |
| ベッド/ベット | bed:寝台 | bet:賭ける |
| ドッグ/ドック | dog:犬 | dock:波止場、接続部 |
| バッド/バット | bad:悪い | bat:バット、コウモリ |
| カード/カート | card:カード | cart:荷車 |
標準的な表記では「バッグ」と「バック」のように書き分けられますが、実際の発音や会話では区別が曖昧になることがあります。
8.英語の段階ですでに同音のもの
ここまで紹介した語の多くは、英語では異なる発音をします。
一方、次の語は、カタカナ化によって同じになったのではなく、英語の段階ですでに同じ発音をする同音異義語です。
英語では、このような語を homophones と呼びます。
| カタカナ | 英単語 | 意味 |
|---|---|---|
| ライト | right / write / rite | 右・正しい/書く/儀式 |
| ナイト | night / knight | 夜/騎士 |
| シー | see / sea | 見る/海 |
| サン | sun / son | 太陽/息子 |
| ミート | meet / meat | 会う/肉 |
| ペア | pair / pear | 一組/梨 |
| ピース | peace / piece | 平和/一片 |
| ブレイク | break / brake | 壊す・休憩/ブレーキ |
| セール | sale / sail | 販売/帆・航海する |
| メール | mail / male | 郵便/男性の |
| ウィーク | week / weak | 週/弱い |
| ホール | hole / whole | 穴/全体の |
| フラワー | flower / flour | 花/小麦粉 |
| テイル | tail / tale | 尾/物語 |
| メイド | made / maid | makeの過去・過去分詞/女性使用人 |
| ノー | no / know | いいえ/知っている |
| ワン | one / won | 1/winの過去・過去分詞 |
| ツー | two / to / too | 2/~へ/~も・あまりにも |
| フォー | four / for | 4/~のために |
これらは、英語話者も発音だけでは区別できません。文脈やスペルによって意味を判断します。
9.複数の理由が重なって同じになる例
一つの音だけでなく、複数の違いが同時に失われることもあります。
| カタカナ | 英語1 | 英語2 | 主な違い |
|---|---|---|---|
| クラッシュ | clash | crush | LとR、母音 |
| ロード | road | load | RとL |
| ロード | load | lord | 母音、R |
| グラマー | grammar | glamour | RとL、母音 |
| フレーム | frame | flame | RとL |
| ベリー | berry | very | BとV |
カタカナ表記では、一つの形に三つ以上の英単語が対応することもあります。
たとえば「ロード」には、少なくとも次の三語が考えられます。
- road:道路
- load:荷物、負荷、読み込む
- lord:君主、領主
まとめ
英語では異なる単語でも、カタカナにすると同じ表記になることがあります。
主な原因は次のとおりです。
- /s/と/θ/が区別されない
- /l/と/r/が区別されない
- 英語の複数の母音が同じカタカナになる
- /s/と/ʃ/がともに「シ」になる
- /b/と/v/がともにバ行になる
- Rを含む母音や二重母音が長音で表される
- 語末の子音の違いが分かりにくくなる
- 英語の段階ですでに同音になっている
一般向けには、このような語を「カタカナ語の同音異義語」と呼んでも意味は伝わります。
ただし、より正確に表現するなら、次の名称が適しています。
カタカナ表記上の同形異義語
英語では発音が異なる語も含まれるため、すべてを英語の「同音異義語」と呼ぶのは正確ではありません。
カタカナだけで英単語を覚えるのではなく、スペル、意味、英語の発音を一緒に確認することが重要です。